クズネツォフの「バービィ・ヤール」
日本でも翻訳がある『バービイ・ヤール』であるが、これは原題にРоман-документとあることで分かるようにドキュメンタリー小説である。作者も断っているが、資料に基づく時代背景やクズネツォフ自身の子供時代の実体験を小説風に脚色したつくりとなっている。
内容は1941年9月のドイツ軍によるキエフ占領から1943年11月のソヴィエト軍による解放までの期間にキエフで起きたことが主人公のクズネツォフ少年の体験を通して描写される。また、布告やビラや事件の類などの資料を掲示し、同時期に起きた大きな事件についても述べられている。
現在小説は2つ。クズネツォフがまだソ連にいた66年に書かれたもの、そして70年にイギリスに亡命して73年に出版したものとある。
66年版は雑誌『青年』に発表された。大幅な削除、命令により挿入された箇所、その他本質を歪める検閲の元出版されたという。資料の大部分は偏りのない事実と見て良いと思われるが、時折はさまれる作者本人の主張や反ファシズムに対する憎しみの吐露など物語部分に共産主義的プロパガンダ臭を感じさせる。現在日本語版で手に入るものが66年版しかないため、検閲による偏向がどの程度加わったものかは判断がつかない。
73年版は以前削除された部分と加筆を加え出版されている。
66年版の小説本文はこちらのサイトで読むことが可能。
http://www.lib.ru/PROZA/KUZNECOW_A/babiyar.txt
日本で出版された翻訳も原作同様2つあるが、両方とも絶版につき入手困難。平田訳は英語版からの重訳。
(草鹿外吉訳)『バービイ・ヤール』大光社, 1967.6.1
(平田恩訳)『バービイ・ヤール』講談社, 1973.9.28
