ジーナ・プロニチェヴァはユダヤ人で、29日にバービィ・ヤールに出頭し処刑されかけたが、危ういところで一命を取り留めた証言者である。戦後、ウクライナにおけるファシストの戦争犯罪を証言する法廷に証人として立った。
クズネツォフの小説に引用されているジーナ・プロニチェヴァの証言は衝撃的である。彼女の生存はほとんど奇跡的といって良いと思うが、多かれ少なかれ戦争の生存者とはこういった奇跡としかいいようのない生き延び方をしているものかもしれない。
ここでジーナが体験したことはバービィ・ヤール事件の描写としてとても大事であるので、クズネツォフの小説より引用した。18ページに及ぶ長いものだが、ここでは彼女の箇所全文を掲載したい。
ユダヤ人の両親を連れてバービィ・ヤールに出頭したプロニチェヴァの視点は、殺された他のユダヤ人全員が感じ、体験したものと同じ当事者のそれである。この体験談にはバービィ・ヤールへと続く行列、処刑場の様子、殺される瞬間、そして運良く生き延び、逃げ出すまでの様子が語られている。以下、4つの部分に分け、便宜的にタイトルをつけ掲載した。
引用元は
アナトーリー・クズネツォフ『バービイ・ヤール』大光社版の訳(草鹿外吉)である。
彼女はビラを読みにいった。すばやく読んでたち去った。だいたい、命令をかいたビラの...
たしかに、大部分の人たちが、ジーナと同じように感じていたといってよかろう。かれら...
不意にそこへ、一台のオープンカーがやってきた。その中には、背が高くスマートな、大...
ふたりはひどく長いあいだゆっくりと這っていった。途中で断崖にぶつかり、向きを変え...